当科の取り組みと特徴 当科の取り組みと特徴
- ガイドラインや科学的根拠(エビデンス)に基づき、患者さん一人ひとりの状態に合わせて最善と考えられる治療計画を立案・実行します。
- 放射線のビームを病巣に集中させ、周囲の正常な組織への影響をできる限り減らす「高精度放射線治療」に注力しています。これにより、治療効果を高めつつ、副作用の軽減を目指します。
- 地域の中核的総合病院として、他診療科と緊密に連携しています。糖尿病や心臓病などの基礎疾患をお持ちのがん患者さんにも、安全に配慮した放射線治療を提供できる体制を整えています。
- 患者さんの生活の質(QOL)を重視し、痛みや出血といった症状の緩和を目的とした「緩和的放射線治療」にも力を入れています。
・当院は日本放射線腫瘍学会の認定施設です。
外部放射線治療装置(リニアック) 外部放射線治療装置(リニアック)
当院の放射線治療システム
・バリアンメディカルシステムズ True Beam
・ユーロメディテック社 光学的照合装置 AlignRT
・島津製作所 動体追跡システム SyncTraX FX4
バリアンメディカルシステムズ製の高精度治療対応リニアックTrue Beamが導入されています。本装置の特徴は、病巣周囲の正常組織への影響を最小限にしながら病巣形状に適した照射を行うVMAT(回転型強度変調放射線治療)が可能であること、治療前に寝台に寝た状態でⅩ線・CT画像を取得し、照射位置ずれを最小限に補正して照射を行うIGRT(画像誘導放射線治療)システムが搭載されていることです。
光学的照合装置(AlignRT):高解像度カメラを使用して被ばくも侵襲もなく患者皮膚表面を追尾し、正確な位置合わせ(体表面誘導放射線治療:SGRT)ができます。
動体追跡システム(SyncTraX FX4):呼吸などにより動く肺がんや肝臓がんに対して正確に放射線を照射することを可能とする装置です。あらかじめ腫瘍近傍に留置した金マーカーを4式のX線透視装置で捉え、腫瘍と一緒に動く金マーカーが所定の位置にある間だけ放射線を照射させることで腫瘍にのみ放射線を集中させ、正常な組織への不要な被ばくを低減させることを可能となります。
強度変調回転照射 (VMAT) 強度変調回転照射 (VMAT)
強度変調放射線治療(IMRT)とは、コンピュータの助けを活用し、腫瘍部分に放射線を集中させながら、周囲の正常な組織への照射線量を抑える照射技術です。これにより、治療効果を高めつつ、副作用の軽減を目指します。
現在では、このIMRTの技術に「回転照射」を組み合わせた強度変調回転照射法(VMAT)が広く用いられています。VMATは、治療時間を短縮できるため、患者さんの負担軽減につながります。当院ではこのVMATを原則的に採用しており、精密な治療計画を正確に実行しています。
IMRTは、現在保険診療において多くの種類のがん治療に適用が可能です。当院では、患者さんの状態や腫瘍の種類を慎重に検討し、従来の照射法と比べてIMRTの有用性が高いと判断される場合に実施しています(すべての症例が対象となるわけではありません)。
前立腺がんのVMAT
頭頚部がんのVMAT
定位放射線治療(ピンポイント照射) 定位放射線治療(ピンポイント照射)
定位放射線治療は、通常の外部放射線治療に比べ、より高い精度で病変の位置を特定します。放射線を病変の形状に正確に合わせ、3次元的に集中して照射する治療法です。これにより、周辺の正常な組織への影響を抑えながら、病変に対して高い線量を届けることが可能になります。
定位放射線治療の適用は、転移性脳腫瘍などの頭蓋内悪性腫瘍や聴神経腫瘍などの良性腫瘍、さらに肺や肝臓などの体幹部の腫瘍にも広がっています。
この治療は、病変の大きさが3~4cm程度以内のものに特に適しており、良い治療効果が期待されます。ただし、あまり大きな腫瘍や複数にわたる腫瘍には向かない場合があります。
当院では主に下記の疾患に対して定位放射線治療を行っています。
- 転移性脳腫瘍などの頭蓋内腫瘍
- 直径が5cm以内で、かつ転移のない原発性肺がん、原発性肝がん
- 3個以内で他病巣のない転移性肺がんまたは転移性肝がん
- 転移病巣のない限局性の前立腺がん
- 直径5cm以下の転移性脊椎腫瘍
- 5個以内のオリゴ転移
原発性肺がんの定位放射線治療。動体追跡システムを併用して4回の通院で治療を完遂しました。
脳転移に対する金属フレームレスの定位放射線治療
治療の特徴: 当院では、単発または多発性の脳転移に対し、放射線の線量を病巣に集中させる定位放射線治療を、短時間かつ効率的に実施しています。
患者さんの負担軽減: この治療システムでは、患者さんの頭部を専用のプラスチック製マスクで固定します。これにより、従来の治療法で必要とされていた金属フレームを頭蓋骨に固定する処置は不要です。患者さんの身体的・精神的なご負担の軽減を目指します。
高い治療精度: 当院のシステムは、高い精度で定位放射線治療を提供することが可能です。さらに、HyperArc(ハイパーアーク)という専用ツールを活用し、より効率的な治療計画に基づいた照射を実施しています。
図:当院で使用するプラスチック製固定具
Qfix社資料より転載
脳転移の定位放射線治療
動体追跡システム 動体追跡システム
定位的放射線治療では、5㎝以下の小さな病巣に対してピンポイント的に高線量を集中照射します。治療は1回から数回で終了します。肺や肝臓などにできた呼吸移動する腫瘍に定位照射する場合、従来は数十秒間の息止めが必要でした。当院に導入した島津製作所のSyncTraX FX4は、動体追跡システムに特化した装置になります。腫瘍近傍に留置した金属マーカーを目印に追跡して、腫瘍に正確に照射します。これにより、照射範囲を小さくでき、副作用のリスクが減ると期待できます。
腫瘍近傍に埋め込んだ金マーカーを2方向からのX線透視画像上でモニタリングし、治療ビームの照射タイミングをコントロールします。
体表面位置照合システム 体表面位置照合システム
当院では、ユーロメディテック社の光学的照合装置「AlignRT」を導入しています。このシステムは、光学技術と高解像度カメラで患者さんの体表面をモニタリングし、高い精度で位置合わせを実施できます。光を用いるため、患者さんのX線による被ばくはありません。
毎回の治療時の体位を正確に再現できるため、照射位置を示す皮膚の印を最小限に抑えることが可能です。また、照射中もリアルタイムで体の動きを監視し、許容範囲を超えた動きを検知した場合には、自動的に照射が一時停止されるため、より安全で正確な治療につながります。
乳がん術後の放射線治療からこのシステムの活用を開始しました。とくに、左側乳房の治療では、呼吸調整と組み合わせることで、心臓や肺への影響を少なくすることが期待されます。
従来、位置合わせの目印として皮膚にマジックで多数のマークを描く必要があり、特に汗ばむ季節などには色が下着についてしまうというご不便がありました。本システムの導入により、この皮膚のマークを最小限に減らすことができるため、患者さんのご負担軽減にも貢献します。
緩和的放射線治療 緩和的放射線治療
緩和的放射線治療
目的: がんによる痛みや苦痛といった症状をやわらげ、患者さんの生活の質(QOL)の維持・改善を主な目的とした治療です。
適用される症状: 骨転移による痛み、腫瘍が脊髄や神経を圧迫することによる麻痺や痛み、出血、狭窄、通過障害など、さまざまな症状の緩和に役立ちます。また、今後発生しうる症状の予防的対応として実施を検討する場合もあります。
治療方針の決定: 患者さん、主治医、緩和ケアチームと連携し、最善と考えられる治療計画を検討します。患者さんの全身状態、今後の見通し、そしてご希望を尊重し、お一人お一人に最も適した放射線治療を実施するよう努めます。
再照射について: 以前放射線治療を行った部位であっても、症状の緩和が見込める場合は、再照射についても慎重に検討します。
セカンドオピニオンのご案内 セカンドオピニオンのご案内
セカンドオピニオンのご案内
放射線治療専門医の役割: 放射線治療専門医は、幅広い種類のがん診療に関わり、がん治療を専門とする医師です。
治療選択のサポート: 各種ガイドラインや新しい知見に基づきながら、患者さんがご自身にとって最善と考えられる治療を選択できるよう、情報提供のお手伝いをします。
QOLとライフスタイルへの配慮: 患者さんの生活の質(QOL)やライフスタイルを考慮し、ご希望に沿ったがん治療の選択をサポートします。
ご相談について: 十分な経験を持つ放射線治療専門医が対応いたします。セカンドオピニオンをご希望の際は、主治医からの紹介状など「相談に必要な資料」をご準備ください。
看護師による治療支援 看護師による治療支援
放射線皮膚炎看護外来(2023年4月開設)
治療中の放射線皮膚炎に関する、看護師による相談外来です。
※原則として、放射線治療科医師の指示により予約をお取りします。
【外来概要】
乳がん術後照射では、乳房や胸壁など皮膚に近い部位に放射線があたります。治療回数が進むと治療範囲に赤み・かゆみなどの皮膚炎が起こりますが、擦れなどの刺激で症状が強くなる場合があります。できるだけ症状を悪化させずに治療を続けていただくための相談窓口です。症状悪化を防ぐケア方法のご紹介や相談への対応、日常生活上の注意事項のご提案を致します。
【ご利用のタイミング例】
・放射線治療開始時のすべての方
・放射線皮膚炎の症状が気になりはじめた、または症状が強くなってきた時など、ご希望や症状に応じて利用可
【外来概要】
・外来担当者:放射線治療科外来看護師、皮膚・排泄ケア認定看護師、がん看護専門看護師
・外来開設日:月曜日~金曜日(祝日を除く)、9:00~17:00の間で応相談
放射線治療における看護支援
医師の診察の後、放射線治療の準備や治療の流れについてご説明します。
その他、診察で確認し忘れたこと、気がかりなことを伺って、看護師から補足説明をしたり、ご希望に応じ医師からもう一度説明が受けられるように調整いたします。
副作用対策や、治療中の日常生活の調整などのご相談にも対応しています。
お気軽にお声かけください。
※ご相談内容により、専門的な相談窓口のご利用を提案することがあります。
常に昨日よりも良い治療を目指す 常に昨日よりも良い治療を目指す
「正確な治療技術で、安心できる医療を提供する」をモットーに、日々進化する技術を取り入れた高精度放射線治療を、患者さんごとに適した形で提供することを目指します。高度な技術を支えるのは、医学物理士、治療専任技師などの専門スタッフです。充実したチーム体制により、放射線治療の品質は厳しく管理されています。それに加えて、専従看護師、がん専門看護師が医師・技師をサポートし、患者さんと丁寧に対話することを心がけています。「総合力とチーム力」を結集し、常に昨日よりも良い放射線治療を、より多くの患者さんにお届けできるよう努めてまいります。