胆石・ソケイヘルニア外来
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胆石・ソケイヘルニア外来 胆石・ソケイヘルニア外来
当院外科では、患者さんにより迅速かつ的確な治療をご提供するため、当院での手術実績の豊富な胆石およびソケイヘルニアを対象とした「専門外来」を新設いたしました。長年の手術経験を活かし、患者さん個々の状態に応じた最適な治療をご提案します。いろいろな病気をお持ちで、他の病院ではリスクが高く困難な手術でも、ほぼ全ての診療科が揃う総合力を背景に、安全に手術を行えるのが当院の強みです。ヘルニアに関してはソケイヘルニアのみならず、臍(さい)ヘルニア、腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアなどヘルニア全般に対応しておりますので、お悩みの方がいらっしゃいましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
胆石症について 胆石症について
・胆のうの役割
胆のうは肝臓のすぐ下にくっつく袋状の(水風船のような)臓器です。主な役割は、胆汁(たんじゅう)という、脂肪を分解する消化液を一時的に貯めて、濃縮する事です。ただ、胆汁は肝臓で作られ、胆のうの中に貯蓄されます。胆のうを摘出しても胆汁は作られますのでご安心ください。食事をすると胆のうが収縮し、胆汁が十二指腸に流出し、食事と混ざり合います。
・胆石とは
胆のうの中には胆汁が充満している状態です。胆汁は比較的粘度の高い液体なので、塊ができやすい状態です。胆汁の中の成分(コレステロールなど)が増えると結晶化し、石の様な塊ができます。これが「胆石」です。
・胆石の疫学 *1
日本人の胆石保有率は約10%前後とされています。推定患者数は1,000万人以上と報告されています。
・胆石のリスク因子 *2
高カロリー食(高脂肪食、高コレステロール食)
肥満や急激な体重減少(過度なダイエット)
脂質異常症、肝硬変、溶血性貧血など
胃切除後、長期の静脈栄養など
・胆石発作、急性胆嚢炎
胆石があるだけでは自覚症状はありません。胆石が胆のうの出入り口にはまり込むと、胆汁が排出できなくなり、胆のうが腫れて痛みが出ます。これが胆石発作です。また腫れた胆のうの中で感染がおこると急性胆嚢炎という状態になります。胆石を持っている人のうち何らかの症状が出て、胆のう摘出をするリスクは概ね20~40%で、年間1〜数%であると報告されています。*1
・胆石発作、急性胆のう炎の自覚症状
典型的な症状としては、脂っこい物を食べたあとに右上腹部痛です。みぞおちや背中の痛みがでる方もいます。悪心・嘔吐を伴うこともあります。感染が加わり急性胆嚢炎になると熱が出ます。
・治療方法
無症状胆石 経過観察(ただし3㎝以上の胆石、充満結石などは手術検討)
有症状胆石 腹腔鏡下胆のう摘出術
急性胆のう炎 腹腔鏡下胆のう摘出術、抗菌薬治療、胆のうドレナージ
*1 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018
*2 胆石症診療ガイドライン2021
・手術方法
① 腹腔鏡下胆のう摘出術
方法:お腹に小さな穴を数か所開けて、カメラ(腹腔鏡)と器具を入れて胆のうを摘出する
特徴:傷が小さく、術後の痛みが少ない。回復が早く、入院期間も短い(数日〜1週間程度)
美容的にも優れている
適応:ほとんどの胆石症患者に適応される(約90%以上)
② 開腹手術(かいふくしゅじゅつ)
方法:お腹を大きく切開して胆嚢を摘出する
特徴:炎症が強い場合、出血が多い場合、以前に開腹手術を受け癒着が強い場合に適応
適応:腹腔鏡手術が困難な場合(10%以下)
・手術後の注意点
胆のうを摘出しても、胆汁の流れは変わりませんので、消化機能的に問題ありません。
ただ、中には一時的に下痢、腹部膨満、嘔気、腹痛などの腹部症状が出る方がいますので、症状が落ち着くまでは油物は控え、適度な食事、適切な運動をこころがけるようにしてください。
飲酒や激しい運動は術後1か月程度は控えてください。
ヘルニアについて ヘルニアについて
ヘルニアとは
「本来体の中の「あるべき場所にあるはずのもの」が、違う場所に飛び出てしまう状態」の事です。
代表的なヘルニア
<ソケイ(鼡径)ヘルニア>
ソケイ部とは両足の付け根の部分の事です。ソケイ部の筋肉や筋膜が弱くなり、腸など内臓の一部を支えきれず、皮膚が出っ張ってくるのがソケイヘルニアという病気です。男性に多く、成人の場合60~80代に多い病気です。比較的良く見られる病気で、決して悪い病気ではないのですが、成人の場合自然治癒が難しく、手術が唯一の治療法になります。
・手術方法
・自覚症状
特徴的な症状は鼡径部の出っ張りです。立ったりお腹に力を入れると膨らみ、仰向けに横になると引っ込みます。軽い痛みや違和感を伴うこともあります。
・原因
成人では加齢や腹圧増加により発症しやすくなると言われています。立ち仕事の人、重いものを持つ仕事の人、便秘症の人、前立腺術後の人、咳が多い人などに多く、肥満や妊娠、腹水、喫煙などもヘルニアの原因になり得ます。
・予防法
確実に予防できる方法はありませんが、長時間の立ち仕事を避ける、重い物を持たない、便秘を改善、肥満を防ぐ、禁煙する、などは効果的だと思われます。
・ヘルニア嵌頓(かんとん)とは
普段は出っ張ったり、引っ込んだりする腸が何らかの拍子で出っ張ったままになり、引っ込まなくなった状態です。強い痛みがあり、出っ張りが固く戻らず、嘔吐がある事もあります。これは腸がはまり込んで、締め付けられているサインで、このまま時間が経過すると腸が腐ってしまいます。もしこのような状態になったらすぐに病院にご連絡ください。
項目 | 鼡径部切開法 | 腹腔鏡下ヘルニア修復術 (TAPP) |
特徴 | 従来からの手術 | 比較的新しい手術 | 皮膚切開 | 鼡径部約5cm | 5mm~1cmの傷、計3か所 |
手術時間 | 約1時間 | 約2時間 | 術後の痛み | TAPPの方が痛みは軽度(個人差あり) |
手術難易度 | 比較的容易 | やや習熟が必要 |
・入院期間
3泊4日(状況に応じて変わることもあります)
・術後の生活、仕事復帰までのおよその期間(あくまで目安なので自己調整を)
活動内容 | 可能な目安 | 注意点 |
シャワー | 退院当日~ | 傷はあまりこすらないように | 入浴 | 退院後外来での診察後 | 退院後外来で傷の診察をしてから |
デスクワーク | 退院翌日~ | 傷が痛い場合は控えめに | 散歩 | 退院翌日~ | 傷が痛い場合は控えめに |
立ち仕事、軽労働 | 退院数日~ | 長時間の立位は避ける | 重労働(重い物を運ぶ等) | 退院1か月~ | 荷重は少しずつ |
スポーツ、筋トレ | 退院1か月~ | 様子見ながら再開 |
<臍(さい)ヘルニア>
臍は「へそ」の事で、へその奥の筋肉や筋膜の隙間から、腸などが出てきて、皮膚が出っ張ってくる病気です。これも決して悪い病気ではないのですが、成人の場合自然には治らず、手術が唯一の治療法になります。
・自覚症状
特徴的な症状は「へそ」の出っ張りです。立ったりお腹に力を入れると膨らみ、寝ると引っ込みます。軽い痛みや違和感を伴うこともあります。ソケイヘルニア同様、腹圧の上昇で発症しやすくなります。やはりヘルニア嵌頓のリスクがあり、注意が必要です。
項目 | 開腹ヘルニア修復術 | 腹腔鏡下ヘルニア修復術 |
特徴 | 従来からの手術 | 比較的新しい手術 | 手術方法 | 単純閉鎖 | メッシュ使用 |
再発リスク | 腹腔鏡下手術より高い | 低い |
手術難易度 | 容易 | やや習熟が必要 |
・入院期間
3泊4日(状況に応じて変わることもあります)
・術後の注意点
腹圧を高めるような生活習慣(便秘、慢性咳嗽、肥満、排尿困難など)の是正が必要です。
術後の生活についてはソケイヘルニアの項をご参照ください。
<腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニア>
お腹の手術後、傷の奥の筋膜が少しずつ緩み、隙間から腸などが出てきて、皮膚が出っ張ってくる病気です。この病気も悪性の病気ではなく、めずらしい病気ではありませんが、自然に治ることはなく、手術が唯一の治療法です。
・自覚症状
特徴的な症状は手術した傷周囲の出っ張りです。立ったりお腹に力を入れると膨らみ、寝ると引っ込みます。軽い痛みや違和感を伴うこともあります。
・原因
前回の手術時に傷が感染してしまった場合、加齢、肥満、糖尿病などが原因になり得ます。
・ヘルニア嵌頓とは
ソケイヘルニアと同様、嵌頓する可能性がありますので、嵌頓の症状が出たらすぐ病院にご連絡ください。
項目 | 開腹ヘルニア修復術 | 腹腔鏡下ヘルニア修復術 (TAPP) |
特徴 | 従来からの手術 | 比較的新しい手術 | 手術方法 (ヘルニアの大きさで手術方法を選択) |
小さい:単純閉鎖 大きい:メッシュ使用 |
メッシュ使用 (大きい場合は手術困難) |
手術時間 | 一般的に開腹手術の方が短い | 感染リスク | 一般的に腹腔鏡下手術の方が低い |
これらはお腹の中の癒着の程度によって、手術難易度や手術時間が大きく変化します。
ヘルニアが大きい場合、腹腔鏡下手術は非常に困難になりますので、開腹手術になることが多いです。
・入院期間
約1週間~2週間程度(ヘルニアの大きさ、手術方法、術後経過により変化します。)
・術後の注意点
腹圧を高めるような生活習慣(便秘、慢性咳嗽、肥満、排尿困難など)の是正が必要です。
術後の生活についてはソケイヘルニアの項をご参照ください。