「済生会中央病院」と「国立がん研究センター中央病院」との連携協定について

2013年9月にがん研有明病院と連携協定を結びましたが、この度、2015年4月に国立がん研究センター中央病院とも連携協定を結びました。いずれも日本を代表するがん専門病院です。

何故 がん専門病院と連携をするのでしょうか?

持病を持ったがん患者さんの治療を安全に行えるようにし、がん患者さんへの門戸を広げるためです。 昨今の医療技術の進歩は、専門性を高めることにより、高度で先進的な医療を可能にしました。専門分化や臓器別分化がある程度ないと、ハード的にもソフト的にも、その分野における今以上の進歩が難しくなるといった現実があるからです。しかし、本来医療が目指すべき姿は、全人的診療であって、高度に専門化した治療とは必ずしも併存できない場合があります。
がん診療についても同様のことが言えます。高度先進医療を施す専門病院においては、細かく専門分化された部門、例えば、胃がんの専門部門、肺がんの専門部門などのように、担当する部門が臓器別に分かれており、更にそれぞれの臓器別部門が手術治療の専門部門、薬物治療の専門部門、放射線治療の専門部門などに分かれています。これらの部門は有機的に連携がよくとれているので、がんを治療する上では、多くの専門家がそれぞれの立場の意見を出し合って、患者さんに最も適した治療が施されます。
困るのは、がん以外の病気(いわゆる持病)があった上で、がんの治療を行わなければならないとき、あるいは、がんの治療中に、がん以外の病気(脳卒中、心筋梗塞、感染症など)が起こったときです。近頃の人口の急激な高齢化によって、持病のある患者さんは急増しており、また、いまだ発症はしていなくても、がんの治療によって体力が弱まった隙に発症してしまう病気を、潜在的に持っている患者さんも増加しています。がん専門病院は、がんの診断、治療に特化されている病院なので、がんの診療に必要な最先端の医療機器が揃っており、多くの専門家が常駐していますが、がん以外の病気の診療機器は少なく、がん以外の領域の専門家は少ないのが普通です。したがって、がん専門病院では、がん以外の持病を持ったがん患者さんすべてを受け入れることができないのが現状です。すべてのがん患者さんに対して門戸が開かれている訳ではないことになります。
そこで、がん専門病院と総合病院である当院が密接な連携を持ち、持病のあるがん患者さんに対しては、持病を当院が管理しながら、がんの治療はがん専門病院で存分にできるようにし、また、がん治療中にがん以外の病気が発病した患者さんに対しては、当院がその病気の治療をサポートしたり、引き継いだりして、結果的に、すべてのがん患者さんが、最先端のがん治療を安心して受けられる仕組みを作りました。

いくつかの専門病院同士が連携をするのでは駄目でしょうか?

他の領域の専門病院同士が協力し合っても、患者さんにとって最も良い結果は得られません。 専門家が専門家たる所以は、技術も知識も自分の専門領域に特化されている、限られていることにあります。多くの病気を併せ持った患者さんに対して、全人的視点を持って治療に当たるためには、全ての病気について、ある程度以上の知識を持った医師が加わらなければできません。循環器系の持病がある患者さんに、がんの手術を行う際、持病が悪化しないかどうかを判断するには、がん手術が体にもたらす影響の大小を正確に把握していなければ判断できません。循環器の専門病院に協力を依頼しても、がん治療の経験がないので、判断が難しいわけです。 その点、当院は総合病院なので、がんの専門医は勿論、循環器、神経、糖尿、消化器、呼吸器・・・多くの専門家が常駐しており、常に互いに協力し合って一人の患者さんを治療することを常としているので、専門病院からの相談に対して、適切に対応することができます。一方、大学病院は、確かに全診療科が揃っていますが、組織的に診療科毎の縦割りが進んでおり、多くの診療科が協力して一人の治療に当たることは難しくなっています。

具体的に連携はどのような形でされているのでしょうか?

国立がん研究センター中央病院、がん研有明病院とも、患者さんについての相談は、当院からそれぞれの病院に定期的に派遣している医師を通して受けたり、追加の精密検査などが必要な患者さんの場合には、患者さんに当院まで来てもらい、当院の医師の診察、検査を受けてもらっています。検査の結果、がん治療の前に持病の治療が不可欠と判断された場合には、優先的に入院治療を行い、がん治療に遅滞を来さないようにしています。また、ときには、持病が重いため、がん専門病院での治療はリスクが高いと判断された場合には、当院で、持病の専門家の厳重な監視下にがん治療が行われることもあります。
実際に当院に紹介された患者さんの数は、2015年11月現在、国立がん研究センター中央病院が約30人/月、がん研有明病院が約50人/月ほどで、いずれも増加しつつあります。

左から当院 高木院長、国立がん研究センター 堀田理事長・総長、国立がん研究センター中央病院 荒井院長

当院とがん専門病院が密接な連携を組むことで、持病があるために、がん専門病院単独では対処しにくかったがん患者さん達に、安心・安全ながん治療を提供できるようになりつつあり、がん治療のイノベーションを起こしつつあると思います。今後、我々の連携がモデルケースとなって、同じ様な連携が日本全国に広がっていくことを願っています。