救急診療科

当院における救急診療科の概要と実績

 救急診療科では、救急医学、救命集中治療学、重度外傷・熱傷をはじめとした救急外科学(Acute Care Surgery)を専門とする救急指導医を擁し、多様な疾病や外傷に対して重症度に関わらず対応するER(Emergency Room)型救急診療に加えて、救命医療を要する重症患者への根本治療や集中治療に従事する。救急外来を受診する患者は、救急車搬入が平均で450人/月、徒歩受診を含めると約1150人/月に達し、今後益々増加することが予想される。平成24年度からは救命救急センター(22床)を開設し、重症救急患者の受け入れを強化すると同時に、重症救急患者に対する救命集中治療を開始した。当科では救急医学に関する学術的活動(詳細下記)を精力的に行っており、国内外を問わず多くの主要学会や著作を通じて臨床・基礎研究の成果を発信している。
 当院は、日本救急医学会が認定する救急科専門医指定施設の一つであると同時に、東京都脳卒中急性期医療および東京都心臓循環器救急(CCUネットワーク)にも参画している救急中核病院である。これまで培ってきた脳卒中・心臓循環器救急とともに、重症外傷診療や救命救急集中治療の救急専門施設として、かかりつけ患者や地域の救急医療を支えることを目標としている。

平成30年度 救急診療科プログラム(修了年限:原則3年間)

<はじめに>

 救急診療科では2011年4月に救急科専門医による救急診療体制が確立され、救急外来での北米型初期診療(年間5000件強の救急車受け入れ等)を開始し、2012年1月から救急科専門医指定施設として認可された。2012年7月からは初期診療に続く救命のための緊急処置・手術や、救命救急センター(22床)での救命集中治療を開始し、同年12月に東京都から3次救急施設の指定を受けた。2017年5月に新病棟が竣工され救命救急センターの病床が拡充(30床)された。今後の機能強化を見据え、専修医および若手専任医として学閥に拘らずやる気のある優秀な人材を広く募集する。
 本プログラムは、日本救急医学会の一次審査を通過した平成30年度の公認プログラム(案)である。本プログラムでは、救急医学を志す専修医等が救急科専門医資格を取得するだけでなく、subspecialty分野でも研鑽を積むことを目標とするが、一定期間の救命・救急医学研修(1年単位)を希望する医師にも門戸を開いている。
 当科の活躍が期待されるEmergency Room (ER)、Acute Care Surgery(ACS)、Emergency Intensive Care Unit (EICU) では、オールラウンドな救急診療能力とともに、各領域の専門性を併せ持った救急医によるチーム医療が必要となる。よって当科専修医の研修では、傷病の種類や重症度に関わらない総合救急診療能力の獲得を共通のコンポーネントとして、各分野での専門性を備えた、ER型救急医外科系救急医集中治療系救急医の育成を目指している。外科系救急医を志望する場合は、救急診療科での研修に加えて、外科系診療科での手術・周術期管理を研修する期間を別途設ける。また救急診療で必要となる治療法(心・脳・腹部血管造影、内視鏡、手術ほか)に精通することは、初期診療能力にも良い影響をもたらすため、これらの治療法の研修を希望する場合も研修期間を別途設ける。

<平成30年度 救急科専修医研修プログラム>

プログラム名
1. 救急科専修医研修プログラム 概要
2. 救急科専修医研修プログラム 冊子

※各プログラムをクリックすると詳細が確認できます。

<救急診療科における指導体制>

施設基準 日本救急医学会救急科専門医指定施設、日本救急医学会指導医指定施設、
東京都指定二次救急医療機関、三次救急医療機関(救命救急センター)、
CCUネットワーク、脳卒中急性期医療機関、
日本集中治療医学会専門医研修施設、日本外傷学会外傷専門医研修施設
災害拠点病院、日本DMAT

 

専門医・指導医 日本救急医学会専門医 5名、 日本救急医学会指導医 1名
日本内科学会認定内科医 3名
日本外科学会専門医 2名、 日本外科学会指導医 1名
日本消化器外科専門医 1名、 日本消化器外科指導医 1名
日本外傷学会専門医 1名
日本集中治療医学会専門医1名
日本熱傷学会専門医 1名
東京消防庁救急隊指導医 5名

 

<参考:平成29年度までの学会認定救急科専門医プログラム>

プログラム名 プログラム番号 開始日
1. 救急専門医ダイレクト育成プログラム 0568-01 2015/1/1
2. ER 型救急医育成プログラム 0568-02 2015/1/1
3. Acute Care Surgeon 育成プログラム 0568-03 2015/1/1
4. 救命集中治療型救急医育成プログラム 0568-04 2016/1/1
5. 救急科専攻医研修プログラム 平成29年度 0568-05 2017/4/1

※各プログラムをクリックすると詳細が確認できます。

一般目標: GIO

1. 救急診療の基本を習得し、医学の進歩に対応するための方策(文献利用ほか)にも精通する。

2. 救急科専門医の取得

3. subspecialty分野(ER, ACS, EICU)の確立

4. 各種治療法(心・脳・腹部血管造影、内視鏡、手術など)の選択研修

行動目標: SBOs

【専修医1-2年目(R3-4:卒後3-4年目相当)】

1. 患者・家族、救急隊員との良好なコミュニケーション能力、基本的診察方法、および診断学の習得

2. パラメディカルとの連携

3. ERでのマネージメント

① 患者受け入れ可否の決定

② 蘇生法(BLS, ACLS, ICLS, JATECほか)および救命処置の習得と指導

③ 救急医学領域における診断学(各種画像診断学を含む)および初期治療

④ 専門診療科との連携

⑤ 患者処遇(帰宅、一般病棟入院、集中治療室入院、緊急手術の要否、転院ほか)の決定

⑥ ER内外の調整・連携

4. ACSでのマネージメント(一般外科系、脳神経外科系、整形外科系など)

① 緊急手術適応の理解

② 患者および家族への説明

③ 大量出血時の準備(輸血法の理解、輸血確保、セルセーバーほか)

④ 手術室(看護師、麻酔科医)との連携

⑤ 手技・術式の習得

⑥ 術中判断(術式追加・変更、大動脈閉塞バルーンの使用法ほか)

5. EICUでの患者管理

① 肺動脈カテーテル等による厳密な循環管理

② 人工呼吸器管理をはじめとした厳密な呼吸管理

③ 緊急血液浄化

④ 補助循環(PCPS, IABP)

⑤ 体外ペーシング

⑥ 脳低温療法

⑦ 感染制御、栄養管理

⑧ 脳死、尊厳死の理解

⑨ 内科的集中治療管理

⑩ 周術期管理

⑪ 入退室基準の理解

6. 救急医療システムとMedical Control(MC)業務の理解

7. 災害医療の理解

8. 床研究の実践と各種関連学会(国内・国外)での口頭・誌上発表

【専修医3年目の例(R5:卒後5年目相当)】

 救急専従期間の最終年となる専修医3年目には、チーフレジデントとして後進の指導に携わる。東京都MC業務の一部にも参加する。専修医3年目終了前(例年2月頃)に救急科専門医資格の申請書類を提出する。

【専修医4年目以降の例(R6以降:卒後6年目相当以降)】

 専修医4年目(例年9月頃)に救急科専門医資格に関する書類審査および試験が終了し、翌年1月から救急科専門医となる見込みである。専修医4年目以降のプログラムに関しては、希望する選択研修等により期間や具体的研修内容が個別に決定される。

<研修方略>

1. On-the-Job Training (OJT)

 上級医の指導のもとで後期研修医が診療に専念できるように、ER, ACS, EICUでは後期研修医と上級医がチームとして診療に当たる。チームの組み合わせは、後期研修医の志望する専門性や医療チーム内のバランス等に応じて決定する。
ER(指導医:菅原医師) 傷病の種類や重症度に関わらない北米型救急医療として、急病全般や不慮のケガから、生命危機に瀕する心肺機能停止や重症多発外傷まで全ての救急患者に対応することを目標とする。
ACS(指導医:関根医師) 主に一般外科領域(重度外傷・熱傷、急性腹症ほか)における外傷蘇生手技、手術手技、術中判断、周術期管理等について研鑽を積む。
EICU(指導医:笹尾医師) 先進的モニタリングシステム、人工呼吸器、補助循環(PCPS, IABP)、血液浄化(CHDF, PMX)等を駆使して、重症救急患者における感染症や各種臓器不全に対する高度な集中治療や侵襲制御法の基礎を研修する。
救急専従期間の最終年となる3年目には、チーフレジデントとして後進の指導に当たる。

2. Off-the-Job Training (Off JT)

 標準化された診療方法をOff JTで学び、すぐにOJTで実践することは最も効率的な学習方法である。本邦における救急医学領域では、米国でのAdvanced Cardiac Life Support (ACLS) や Advanced Trauma Life Support (ATLS) を基にして、Immediate Cardiac Life Support (ICLS) やJapan Advanced Trauma Evaluation & Care (JATEC) のような本邦独自の教育コースが開催されている。本プログラムでは、標準的診療方法の習得に加えて、標準的診療方法を越えた各種蘇生法の適応と限界を学ぶことを目標としているが、これらの教育コースの受講は必須であると考えている。<br<習得が難しい一部の外科的救命処置・手技(緊急輪状甲状間膜切開、救急室開胸ほか)は、慶大医学部Clinical Anatomy Lab (CAL) での解剖学研修や3Dビデオ学習によるOff JTにより補完する。

3. カンファレンス

 救急診療の質を向上させるために、カンファレンスによる診療内容の共有や反省は不可欠である。初期・後期研修医の救急初期診療能力を改善させる目的で、ERでの症例検討を週2回行っている。さらに、チーム医療としての救急診療科内での治療方針の決定や、後期研修医への教育のために、救命救急専用病棟の入院患者カンファレンスを週1回行う。また、院内での連携強化を目的とした他診療科(循環器科ほか)との合同カンファレンスや、診療レベルの向上を目的とした他施設(慶大救急科、済生会横浜市東部病院ほか)との合同カンファレンスを定期的に行っている。

4. 選択研修(心・脳・腹部血管造影、内視鏡、他科研修、超音波検査など)

 救急診療における治療法やsubspecialty領域での研修を希望する場合は、通常業務の中で週1単位程度の技術修練時間を置くか、3年間の救急専従診療期間とは別に、関連診療科への院内・院外ローテーション(または一時出向)の期間を置く。選択研修の時期、期間、研修内容の詳細は別途相談とする。

5. 救急関連学会における口頭・誌上発表

 症例検討や臨床研究を学術会議で発表することは、文献・報告例の情報収集による分析力や、論理的・科学的思考力を伸ばす良い機会である。また、臨床上の疑問や問題を抽出して解決することや、臨床研究の立案にも生かされる。救急診療科では、国内外の救急関連学会で活発な学会活動が行われており、国際学会や英文学術誌での発表が多くある。本プログラムでも、徹底した上級医の指導の下に、救急関連学会において、年1回以上の口頭発表と計2編以上の誌上発表を目標とする。

<本プログラムにおける後期研修医の週間業務予定(例)について>

後期研修医 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日 日曜日
午前(08:30-12:30) ER 病棟 ER 病棟 明け休 ER
午後(12:30-17:30) ER 病棟 ER 病棟 明け休
当直(17:30-08:30) 病棟

※毎日08:30-09:00に病棟回診を行う。

※火、木曜日17:30-18:30に外来症例を中心としたERカンファレンスを行う。

※火曜日9:00-10:00に入院患者を対象とした病棟カンファレンスを行う。

※外科系救急医の手術修練は原則として全て緊急手術対応になるので、週間予定より優先される。

※希望があれば週一単位専門技術の習得時間を設ける(対象:内視鏡検査、超音波検査、他科研修、心臓カテーテル検査等)。

※土曜当直および日曜日勤(月2-3回程度)の場合には翌週以降にフリーで代休をとる。

<本プログラム後の進路について>

 本プログラム終了後の進路については個別に対応します。状況に応じて、救急医スタッフとして当院や他施設での勤務を継続することや、大学等で救急医学診療・研究(学位取得を含む)に従事することを強力にサポートします。

業績

【主要著作】

今日の治療指針2013年版:救急医療B.肺動脈カテーテル(医学書院, 2013)

今日の治療指針2009年版:救急医療B.胸腔穿刺法、胸腔ドレナージ術(医学書院,2009)

救急レジデントマニュアル第5版:気管挿管、腹部外傷ほか(医学書院,2013)

手術:肝損傷に対する手術/非手術療法(金原出版, 2012)

家庭医学大全科 六訂版:家庭内暴力(法研, 2010)

救急医学:基本的手術手技 器械縫合・吻合(へるす出版, 2011)

救急医学:腹部外傷診療 肝損傷の診断と治療(へるす出版, 2011)

救急医学:広範囲熱傷の治療 感染症対策(へるす出版, 2003)

救急・集中治療:腹部救急Q&A 外傷性肝損傷(総合医学社, 2011)

救急・集中治療:臓器管理 抗サイトカイン療法(総合医学社, 2008)

救急医療にみる医学留学へのパスポート(はる書房, 2008)

【誌上発表】(筆頭著者 およびCorresponding authorのみ)

Sekine K, et al. Transarterial embolization affects recovery in nonoperative management of severe blunt hepatic injuries. J Trauma, (in press)

Matsumoto S, Sekine K, et al. Chest tube insertion directions: is it always necessary to insert a chest tube posteriorly in primary trauma care? Am J Emerg Med 2015; 33: 88-91

Matsumoto S, Sekine K, et al.Diagnostic performance of plasma biomarkers in patients with acute intestinal ischaemia. Br J Surg 2014; 101: 232-238

Matsumoto S, Sekine K, et al.Digital video recording in trauma surgery using commercially available equipment. Scand J Trauma Resusc Emerg Med 2013; 21: 27-27

Matsumoto S, Sekine K, et al. A quick and easy closure technique for abdominal stab wound after diagnostic laparoscopy. J Trauma 2012; 72: 1448-1449

Matsumoto S, Sekine K, et al. Predictive value of a flat inferior vena cava on initial computed tomography for hemodynamic deterioration in patients with blunt torso trauma. J Trauma 2010; 69: 1398-1402

Sekine K, et al. In vivo IL-18 supplementation ameliorates lethal acute lung injury in burn-primed endotoxemic mice: a novel anti-inflammatory role of IL-18. Shock 2009; 32: 554-562

Cheng X, Sekine K, et al. A microfluidec device for practical label-free CD4 T cell counting of HIV-infected subjects. Lab Chip 2007; 7: 170-178

Zhu H, Sekine K, et al. Immunophenotyping of leukocytes on antibody microarrays. J Med Prim 2007; 36: 297-297

Sekine K, et al. Panning of multiple subsets of leukocytes on antibody-decorated poly (ethylene) glycol-coated glass slides. J Immunol Method 2006; 313: 96-109

Revzin A, Sekine K, et al. Development of a microfabricated cytometry platform for characterization and sorting of individual leukocytes. Lab Chip 2005; 5: 30-37

Sekine K,et al. Plasma hepatocyte growth factor is increased in early-phase sepsis. J Inf Chemother 2004; 10(2): 110-114

佐藤幸男、関根和彦ほか 重症外傷におけるClinical Anatomy Laboratoryでの臨床解剖学教育の意義. JJACS 2012; 2: 62-67

関根和彦ほか 鈍的重症型肝損傷に対する定型的肝切除術の治療成績. JJACS 2011; 1: 53-57

関根和彦ほか 肝損傷の解剖学的特性からみた鈍的重症型肝損傷における非手術的治療. 日腹救医会誌 2011; 31: 637-641

関根和彦ほか 腹腔鏡下に横隔膜損傷を修復しえた鋭的胸腹部外傷の一例. 日外傷会誌2009; 23: 352-356

佐藤洋子、関根和彦ほか 自作透明フードを装着した気管支鏡により摘出できた気道異物の1例.日救医会誌 2009; 20: 929-934

関根和彦ほか 鼠径ヘルニア術中の経ヘルニア嚢的腹腔鏡で診断された大網裂孔ヘルニアの1例. 日臨外会誌 2009; 70: 1516-1519

関根和彦ほか 鈍的重症肝損傷の治療戦略―手術的治療および非手術的治療の適応と限界―.日腹救医会誌 2008; 28: 797-801

関根和彦ほか 輸液療法に反応したⅢb型肝損傷に対する非手術的治療の限界.日救医会誌2007; 18:179-187

【口頭発表】(2007-2014:主要演題 筆頭演者発表のみ)

2014年 日本集中治療医学会総会テーブルラウンドディスカッション 利尿薬抵抗性重症心不全に優先すべきはトルバプタン?持続血液ろ過透析?

2014年 日本救急医学会総会シンポジウム 敗血症モデルにおけるResolvin D2の好中球遊走能と敗血症抵抗性の改善効果

2014年 日本救急医学会総会パネルディスカッション 重度外傷・熱傷患者において白血球フェノタイプの変化から感染合併症が予知できるか?

2014年 Acute Care Surgery 学会ワークショップ 外傷十二指腸損傷における術式と治療成績

2012年 日本消化器外科学会総会ワークショップ 鈍的重症型肝損傷手術の顕性血液凝固障害における多発外傷の意義

2012年 日本熱傷学会総会シンポジウム 熱傷後感染性ショック期における臓器障害と腸管免疫のかかわり

2011年 日本腹部救急医学会総会シンポジウム 鈍的重症型肝損傷における手術およびIVRによる治療成績

2010年 Acute Care Surgery研究会総会パネルディスカッション 外傷診療におけるClinical Anatomy Lab での臨床解剖実習教育の意義

2010年 日本腹部救急医学会総会シンポジウム 鈍的重症型肝損傷に対する非手術的治療の適応と限界

2009年 Acute Care Surgery研究会総会シンポジウム 鈍的Ⅲb型肝損傷に対する定型的肝切除術の治療成績

2009年 日本熱傷学会総会パネルディスカション 高齢者熱傷患者の社会復帰を妨げる要因

2008年 日本外傷学会総会シンポジウム 鈍的腹部実質臓器損傷の重症例に対する非手術的治療の限界

2007年 日本救急医学会総会シンポジウム 外的侵襲後の septic shock / septic ALI に対する免疫学的予防戦略

2007年 日本外傷学会総会シンポジウム 鈍的IIIb型肝損傷に対する定型的肝切除術の治療成績

2007年 日本腹部救急医学会総会パネルディスカッション 輸液療法に反応した深在性複雑性肝損傷における非手術的治療の限界